MUJI×UR 団地リノベーションプロジェクト
1/25 MUJI×UR イベント 「団地リノベーションここだけの話」

※このレポートは、2025年1月25日(土)に無印良品 グランフロント大阪で行われたトークイベントの模様を採録しています。

part2:MUJI×URについて
松本
では、MUJI×URについてまずご紹介したいと思うのですが、団地に今住まわれている方はいらっしゃいますか?結構いらっしゃいますね!
今は住んでいないけれど、以前団地に住まれていた方はいらっしゃいますか?こちらもいらっしゃいますね。ありがとうございます。
松本
MUJI×URのプロジェクトですが、2012年からスタートしています。
無印良品は、暮らしのスタンダードを考えてきた、生活美学の専門店として「感じ良いくらし」を探求し続けていて、URさんも団地の建設による技術の開発や調査研究などを行ってこられているので、団地を通じた日本のライフスタイルの提案をされています。
無印良品とURの両者がこれまでにない新しい暮らしのスタンダードを賃貸住宅で実現しようという試みとして、このプロジェクトがスタートしました。 これまで10年以上取り組んでいて、供給戸数も1000戸以上となっています。 取り組みを行っていくことで確認できたことですが、まずこの3つです。
松本
1つ目は、若年層のお客さまに選ばれていること、2つ目は発信力が高く、色々なメディアで取り上げていただいています。3つ目は、新たな顧客を獲得できていることです。
松本
まず、若年層に選ばれているというところですが、MUJI×URにお住まいになっている方の75%が40代以下となっています。他の団地では、この数字が逆転していると伺っています。
松本
MUJI×URのプロジェクトの概要として、「団地の魅力ってなんだろう」というところからスタートしています。築40・50年となると、通常の場合、古いことは良くないとネガティヴに考えてしまいますが、それを逆手にとったら新鮮に感じることができるのではないかと発想しました。
ヴィンテージデニムのように、古いことを悪いとしない考え方になります。 また、URさんは全国に約70万戸のお部屋を管理されている日本一の大家さんです。
これがとても魅力で、たくさんのお部屋があるということは、新しい暮らしのスタンダードをつくることができると感じました。 団地の陽当たりや風通しについてですが、建設当時はエアコンなどが一般的ではない時代でしたので、とても陽当たりがよかったり、住棟と住棟の間隔をしっかり取って建設されているので、元々団地が持っている魅力をそのまま生かすことができると考えました。

リノベーションを行うにあたり、「こわしすぎず、つくりこみすぎない」ようにしています。先程お話した通り、団地がそもそも良い要素を持っているので、そこにあまり手を加えないで作っていくということが大切なのではないかと考えています。
松本
そこで、MUJI×URは「生かす」「変える」「自由にできる」という3つのコンセプトをつくり、こちらを住戸の設計に生かして行きました。
松本
「生かす」ですが、団地には和室が多いので、敷居や鴨居などの木部を生かした設計を行っています。木部は40・50年経つと、経年変化をして、きれいな飴色になり味がでてきます。これは新しいお部屋では作ることができないので大切にしています。
松本
「変える」についてですが、しっかり団地のもつ良さを生かしては行きますが、水回りなどは古くなってしまっているところも多いので、そういったところは積極的に変えていくようにしています。

最後に、「自由にできる」ですが、賃貸住宅は自分の家ではないので、基本的には住む部屋に自分の暮らしを合わせないといけないと思いますが、MUJI×URはそうではなく、賃貸住宅であっても、自分のライフスタイルによって、部屋の間取りを変化させることができたら新しい暮らしができるのではないかと考えています。

団地は押し入れがたくさんあり、収納が充実しているので、こちらもしっかり生かしつつ、自由にできる部分としても使っています。
松本
こちらですが、元々押し入れだった部分にテレビボードを置いています。
押し入れはふすまを外したり、中棚を取ることでお部屋の延長としても使えるので、押し入れ自体を生かすこともしています。カーテンをつけて、閉じれば収納としても使えます。
こういった押し入れも全部壊さず生かした設計を行っています。
キッチンも変えていくべきところの1つかなと思っており、壁付けのキッチンだったものをアイランドキッチンにしたりもしています。
松本
通常、畳はい草を使用したものが多いのですが、MUJI×URではURさんと共同で開発した「麻畳」を使用しています。
こちらは第2部で詳しくお話をさせてもらえたらと思います。
「自由にできる」部分ですが、団地は元々ふすまで細かく間取りが区切られています。ふすまを全部取ると一つの部屋になるので、それをデフォルトとして考えています。
松本
広い一室空間の中をふすまで間仕切ることも、資料のように家具で間仕切ることができます。賃貸であっても、間取りに縛られずに自由に住み、住んでいる人が自由に変えていけるように設計をしています。
また、URさんと一緒に「共同開発パーツ」をたくさん開発しています。モデルルームでも使用しているのですが、キッチン、麻畳、フローリング、照明などがありますがMUJI×URのプロジェクトを進めていくにあたり、とても重要な部分となります。
そのため、こちらについては第2部でより詳しくご説明したいと思っています。
松本
URさんと取り組んでいる住戸のリノベーションは10年以上行ってきたのですが、今度は団地の共用部のリノベーションもスタートしています。
「MUJI×UR 団地まるごとリノベーション」というプロジェクトになるのですが、団地の共用部をリノベーションして新しくしながら、さらに地域のコミュニティにも寄与して行くプロジェクトになっています。
具体的に、共用部のリノベーションに関しては、住戸と同じく若年層のお客さまに入居をしていただくための企画として行っています。
地域のコミュニティに関しては交流の場をつくり、コミュニティを活性化させる活動をしています。
松本
地域コミュニティの形成と情報発信についてですが、地域の関係者の方や元々いるプレイヤーさんと繋がりながら、団地を舞台に活躍してもらうように考えています。
団地を拠点とした地域の生活圏の活性化をこれからもどんどん行って行きたいと思っています。
現在こちらの活動は関西エリアでは2つの団地で実施していて、1つは堺市の泉北茶山台二丁団地でスタートしています。
松本
こちらの団地では、これまで使われていなかった広場があったので、イベントなどを仕掛けて賑わいをつくっています。
共用部分のリノベーションと言いましたが、実は地面に円を書いただけなのですが、これがすごくいい手法だったんです。
広場の中心がどこなのかが視覚的に分かるようラインを引いたのですが、イベント時には、この円に沿ってフォークダンスを踊る方が現れたり、コストをかけて何かをしたわけではありませんが、きっかけをつくることでこういった賑わいを作っていくような手法もとっていたりします。

大阪の2つ目の団地は枚方市にある中宮第3団地で活動を行っています。
松本
こちらの団地には資料にあるように、六角形を組み合わせたようなかたちのプール跡地があります。URさんの団地には、プールがあるところが結構あるのですが、管理が大変だったり、運営する自治会さんがいらっしゃらなかったり、今はあまり使われていないことが多いようです。
中宮第3団地では、こういった今は使われなくなってしまったプール跡地を、もう一度人が集まる場所に変えていこうということで、プールの中にイベントの日限定で人工芝を設置してみんなで過ごせる空間をつくったりしています。

こども達が遊ぶプールなのでとても浅く、縁の高さがちょうど人が座るのに良いので、資料のような木のベンチをつくりました。このベンチは動かすことができるので、「どこでもベンチ」と呼んでいます。ベンチを設置しただけで、木の下で涼む方がきてくださったりしています。イベントでコーヒーを提供して、プールの跡地で過ごしてもらうための実証実験を繰り返しながら現在もプロジェクトを進めています。