MUJI×UR 団地リノベーションプロジェクト リレートーク vol.2
千葉海浜ニュータウン5万戸の団地再生への取り組み

※このレポートは、2014年5月27日に日本デザインセンターPOLYLOGUEで行われた、パネルディスカッション式のトークイベントを採録しています

土谷
団地というものは日本の歴史の中でとても大事な物語です。日本が高度成長した1950年代は住宅供給不足で、それをどうやってサポートしていったかということですが、そもそもその時代、団地に住むことが人々の憧れでした。それがその後、団地が憧れではなくなった時代を迎え、そして今、団地に住む良さを再発見しようとしているという大きな社会の変化があります。
日本の団地の歴史を考えると、これからの団地のことだけじゃなく、団地を通して、日本の社会をどう考えていくのかということが大切です。
今必要なのは多くの人達と団地について話しながら、日本の社会問題を一緒に考えること。企業というフレームを越えて一緒に考えるためのプラットホームを作れたらと思っています。鈴木先生や色々な方のお話を聞きながら、多くの人に参加してもらいながら議論を進めていきたいと思います。
では鈴木先生、よろしくお願いします。
鈴木
こんにちは、鈴木です。本日はよろしくお願いします。まずは千葉海浜ニュータウンについて説明します。
東京駅からJR京葉線で約35分の稲毛海岸駅を中心に広がっているニュータウンです。1966年から潮干狩りができたような所を埋め立てていった大ニュータウンで、古くは、1966年、新しいものは1980年に建てられました。そこに11万人が暮らしていまして、多摩ニュータウンの次に大きなニュータウンです。
鈴木
そこに、UR賃貸住宅、日本住宅公団が分譲した分譲団地、市営住宅、県営住宅、民間のマンション、一部は、超高層マンション、戸建て住宅など、様々な住宅の形式が混ざっています。検見川浜駅の北側は民間マンションが多いところですけれども、その南側には、非常に多くの戸建住宅がひしめいています。検見川浜駅の南側の海に近いあたりは、高齢化率が40%以上越えているところもありますし、駅前は、まだまだ若い世代が入れ替わっているところもあります。11万人住んでいますので、ある程度の市とほぼ同程度の大きさです。
その中で主に活動しているエリアは2km四方くらいの歩いてもいけるような赤く囲んだ範囲で、人口密度が高く、同じような住棟がたくさん建っています。

ここには高洲地区と高浜地区という二つのエリアがあり、ここだけでも人口4万2千人、世帯数が約2万あります。
鈴木
住宅の様子ですが、30年前から壁紙を貼り替えず住んでいる人が少なからずいまして、お風呂場にカビが生える状況もあり、そういうのを見ながら、今から11年ほど前、ここに大学の研究として、何をやろうか考えました。そして私たちは、どうすればいいかというのを考えつつ、対処をしているところです。

そこで、息子さんにリフォーム業を譲ってしまったけど、まだまだ自分でやりたくてしょうがなくて、私たちのNPOにノウハウとか、道具とかあげるから、何か一緒にやろうという人に出会いました。彼は公団のリフォームの色々な“癖”を知っていて、さらにURの材料を仕入れる流れを知っていました。本当に能力のある方に出会った事が最初の私たちのNPOの取り組みのきっかけになります。

大きなリフォームはリスクも高いし難しいので、まずは小さいことから始めようということでDIY講習会を10年前から細々と始めました。色々なDIY講習会を「こういう曜日だと人がいっぱい来る」とか、「どういう講習だと人が来るか」ということを実験しながら検証していました。そこで、NPOのスタッフが指導を受けて、何でも出来るスタッフが一人生まれました。今度は、その彼女が住人に色々教えています。例えば、URの住宅の一部を再現して、そこで、DIY講習をやっています。さらに、子供たちも集まってきて、電動工具の使い方を教えています。欧米のおもちゃ屋さんに行くと電動工具とか平気で置いてあります。 カギの取り替えのDIY講習会をやろうとしても、私どものNPOで持っているのは、一種類なので皆つまんなくなっちゃうんです。そういうときに、ホームセンターの支店から様々なカギのセットを集めてもらって、そうすると、みんなワイワイ賑やかなDIY講習会になります。
カギだけではなくて、その他にも様々な講習会をやりながら、出来るだけDIYを街に広げようとしています。「先生、ここ見てください」と、自分たちでやったことを自慢するんですよね。出来は悪いんだけども、よかったねって褒めると、すごくいい顔になります。