MUJI×UR 団地リノベーションプロジェクト リレートーク vol.2
千葉海浜ニュータウン5万戸の団地再生への取り組み

※このレポートは、2014年5月27日に日本デザインセンターPOLYLOGUEで行われた、パネルディスカッション式のトークイベントを採録しています

鈴木
さらに、DIYのキットを作ろうかという話になりました。URの賃貸の住宅を、DIYで全部外せるキットを作って売ったらどうかということで商品開発を進めてきました。賃貸住宅には“原状回復”という義務がありますので、その義務をきちんと守りながら、どれだけインテリアのテイストを変えられるかという実験を何回かやりましたが“こういうものを作ってしまったらDIYとは言わないのではないか”と、はたと気づき、辞めました。

東日本大震災の時は、スタッフ皆で現地へ入りました。仮設住宅でみんなと一緒に棚を作ったりといった活動もやってきました。
スタッフにも色々な講習を受けてもらって、リペアやリフォームができるスタッフを養成しています。ですから、ほとんどのスタッフは網戸を張り替えたり、あるいは実際に現場へ行って、壁紙の張替えぐらいはやってしまいます。

そういうDIYをもう少し発展させようということで、“ハイブリッドリフォーム”という仕組みを作りました。リフォームで言うハイブリッドは、プロが工事する部分と施主がDIYでできるところを組み合わせるということです。難しい水回りや、壁の位置の変更、下地の調整等は工務店や業者に任せて、自分で出来る表層形のペンキ、珪藻土、壁紙、床の張替え等、そういうところは自分でやってできるだけ低コストで、しかも楽しく自分らしく愛着の湧くものにする。安心なのは、途中でリフォーム屋さんが施工しているところを見に来れることです。ですから、あまり業者さんが変なことやらないように監視もできます。業者さんは素人が入るのを嫌がります。あるいは、結果として出来たものがデコボコしてたならば、下地を作ったプロが悪いのか、あるいは、それを自分でやった腕が悪かったのかを判定する。そのコーディネイターをやるという仕事で、ハイブリッドリフォームで10数件実施しています。
鈴木
これはハイブリッドリフォームの途中ですね。ほとんど全ての表層系をこの家族が自分たちでやっています。
高齢者向けに最小限の時間で最大限の効果が上がるような“高齢者リフォーム”というものを開発しています。
リフォームを実施するにあたり、綿密に調査をして、それについて実際に介入して良くしていくという部分と、URに新しい提案を持っていく。そういう両面でやっています。年間100件くらいのリフォーム、リペア相談がありますので、その相談の内容から何に困っているのかということの本質を見つけ出して、対応し、解決策を見つけています。例えば温度と湿度が自動的に計測できるデータロガーを設置し、どういうときに結露が発生するのか計測する。そういうことからライフスタイルの提案につなげるような研究を進めています。

これは、ショッピングセンターの空き店舗にURの住戸を再現して、買い物客にUR住戸のどこが問題になっているのかというようなヒアリングをするための拠点とした写真です。
鈴木
中古マンションを買った人のリフォームで、新しいキッチンを取り替えたいという相談を受けることがあります。いわゆる、中古マンションのリフォーム済み物件を買ってしまったけど、キッチンが自分の希望に合わないというわけです。それを避けるため、直接売主と買主を繋ぎ合わせるような中古流通+リフォームの方法を作って、宅建協会、不動産屋さんとタイアップして、実現させようと考えています。

2006年、当時“シェア住宅”というのがほとんど表に出ていない時代に、団地のオーナーから借り上げて、それを学生に住まわせるようなシェア住宅をやっていました。それにあたって、団地の住民と大学の小林秀樹先生と私と、ちば地域再生リサーチが組合を作って、空き家を借り上げて学生に転貸するビジネスを展開しました。空き家のオーナーから5万円で借りて、学生に2万円ずつで3人で住まわせて6万円の収入があり、一ヶ月あたり1万円ぐらいの収益がある仕事をしてきました。団地の夏祭りに参加する意欲のある学生に入居してもらいました。
ちば地域再生リサーチとしては、住居が長い間、空き家になっていたので、まず住むことができるようになるまでのリフォームと、3人が住むことができるようにシェアハウス化するリフォームをします。例えば、音がもれないようにする、ふすまにカギをつけるなど、色々な工夫をしました。最近はシェア住宅が流行していることから、学生たちが自由にシェア生活を始めているということに加え、地元の地主さんたちも自分たちでやり始めたことなどもあり、2年ほど前に、一定の役割を終えたということでシェア住居の取り組みは終了しました。

最近は空き家が増えていますので、それらを運営する組織を今年立ち上げる予定です。空き家を持っているオーナーさんたちにリフォーム費用とインスペクション費用を補助し、中古流通促進させるものです。そこから街全体を活性化することを考えています。