MUJI×UR 団地リノベーションプロジェクト リレートーク vol.2
千葉海浜ニュータウン5万戸の団地再生への取り組み
※このレポートは、2014年5月27日に日本デザインセンターPOLYLOGUEで行われた、パネルディスカッション式のトークイベントを採録しています
- 土谷
- さきほど、日本に事例がないので海外に行きましたとおっしゃっていましたが、海外と日本の違い、または海外をモデルにして日本でできてない所はどういうところでしょうか?
- 鈴木
- 団地再生について言うと海外の方が10年先を進んでいると思います。海外でも最初はハード中心の再生だけをやっていました。もう少し背景を説明しますと、オランダ・ドイツ・フランス等では暴動はだいたい団地で起きるんです。低所得者、移民、失業者、ドラッグ中毒者の寄せ集めが団地に住んでいるためですが、そうするといくらハードを良くしたとしても、人は変わりませんので、人を教育しなければということになります。あるいは仕事を作るということですね。団地再生で新しい住棟の建て替えが起こるのであれば、その建て替えの仕事に彼らに入ってもらう。そういうところでトレーニングをして、技術を持ってもらって、他の団地や建設現場でもできるようになっていく。まさに欧米が先進的にやってることですね。それを国策としてやってるのが一番大きなポイントです。
教育、経済、福祉、まちづくり、公園整備等の補助金を一つに集めて、これを団地再生に投下していく。そういった取り組みは日本では遅れていまして、部署が縦割りなのでなかなかスムーズには進まないのが現状です。 - 土谷
- 海外では国策として動く以上、きちっとした組織も運営母体もあって、人も割り当てられて動いてるということなんですね。この辺りは、URとしては難しいでしょうか。 そもそも背景として日本は貧富の差や、暴動が起きるような社会的、経済的課題が起きてないのかもしれませんし、表面的には起きてないように見えるのかもしれないのですが、特にURの団地は最近だと海外の人とか、それから高齢者や社会的弱者も多く、民間の賃貸住宅には入れない人たちの受け皿にもなっているように思います。その点いかがでしょうか。
- 栗原
- URの団地は日本人が圧倒的に多いですね。今のところ、団地が荒れているという話はあまり聞きません。ただ、特殊な団地で海外の人が4割いるような団地も時々あるんですが、だからといって、非常に治安が悪くなったとか、そういう話は聞いたことがないです。ただ文化的違いがあるとは聞いています。
高齢化については、ほとんどの団地でみられるのですが、建てた時期が同じなので、団地が均一に高齢化しています。 - 土谷
- 鈴木先生、これは、日本的特徴なのでしょうか。海外の場合も同じように、ある一定の年齢層が固まっているのでしょうか。それとももっと流動化しているのでしょうか。
- 鈴木
- 場所によりますけれども、あまりかたよっていません。というのは、荒廃した団地は家賃が低くなるので、そういった所はお金がない若者が入るようになるからです。また、団地の再生はその団地がある市全体の人口構成にあわせるように住戸の組み立てを考えて、例えば、市全体に若い人が20%いるんだったならば、その団地の再生にあたっても若い人が20%住むように市から指導されていますね。
- 土谷
- 日本は一挙に高齢化問題というものが押し寄せてきます。しかも、ニュータウンは傾向として、貧困やある種の弱い部分が浮き彫りにされているような地域になってしまう。そういった地域差もこれから生まれてポテンシャルの弱い場所は更に弱くなるといったことが起きそうです。これからどうやってそうした状況と戦っていくのでしょうか。どんな施策を考えていらっしゃいますか?この11万人に3人の社員で続けていけるものなのでしょうか。
- 鈴木
- 私たちの役割にはマネージャー的なものもありますので、色々な地域団体や民間企業とタイアップしながらでないと難しいと思います。私たちは、ここの場所を選んだので、これからもここでいろいろな仕掛け、事業をつくっていきたいと思っています。
- 土谷
- 生き残る所も生き残らない所もでてきて、自分が住む所がどっちに入るのかということがこれから選択として起きると思っています。それを自分も中心になって、その町を活力ある街にするのか。または、その町を捨てて、隣町の活性化している街に行くのか。そんな事も起きるのかもしれないですよね。日本中全ての街が良くなるということはありません。また、鈴木先生のようなリーダーやマネジメントする人が育っていることが重要になっていきますね。
- 参加者
- 6つの活動の柱の中で、どの事業がメインになっていて、かつ、今後この事業が延びていきそうだとか、ここに力を入れて生きたいというところがあれば、教えてください。
- 鈴木
- 事業規模の6~7割が補助金とコンサルティングです。コンサルティングで直接、地域に介入するものもありますし、地域に還元するものもあります。これからはコンサル中心ではなく、できるだけスタッフ達が自らの仕事のコアを作ってもらいたいと思っています。特にリフォーム事業と中古住宅流通事業がコアになると思います。あとは、管理組合のサポートです。これも結構引き合いが多くて、そのノウハウを蓄積して再生とか建て替えに向けコアの事業にしていきたいと思っています。また、それぞれの事業は循環しています。例えば、買物サポートやっているからリフォームを頼みましょう、という流れになるんです。